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自社の強みの見つけ方|3つの棚卸しで経営者が今日から言語化する方法
会議室で、誰も答えられなかった質問
自社の強みが分からないと感じるときにまず行うべきなのは、感覚で考え込むことではなく、①お客様への聞き取り、②競合との事実比較、③過去の意思決定の棚卸し、という3つの具体的な作業です。強みは多くの場合すでに存在しており、言語化されていないだけです。
例えば、ある製造業の社長がこんな悩みを抱えていたとします。新しい採用パンフレットを作りたいが、自社の強みが何なのか自分でも説明できない、という悩みです。
決算書を見れば、その会社は同業他社より明らかに利益率が高く、取引先からの信頼も厚い。傍から見れば強みだらけの会社です。
ところが、社内で「うちの強みは何か」を話し合ってもらうと、営業部長は「対応の早さ」と言い、製造部長は「品質」と言い、社長自身は「長年の付き合い」と言う。三者三様で、誰も同じ答えを出せませんでした。
これは特別なケースではありません。多くの会社で、強みは確かに存在しているのに、それが言葉になっていない、あるいは社内でバラバラに認識されている、という状態が起きています。
強みが無いのではなく、棚卸しをしたことが無いだけなのです。
関連する事業設計を整理するなら、経営理念の言語化|想いを伝わる言葉に変える5つの手順も参考になります。
うちも似た感じです。社員に聞くとみんな違うことを言うので、結局何が強みなのか分からなくなります。
経営者自身が、自社の強みに気づきにくい理由
経営者が自社の強みを言語化できない背景には、構造的な理由があります。一つは、その強みが「当たり前すぎて」意識に上らないことです。
毎日やっていることは、それがどれだけ他社と比べて優れていても、本人にとっては特別なことに感じられません。長年同じ業界にいる人ほど、この傾向が強くなります。
もう一つは、強みを「自分がすごいと思うこと」と混同してしまうことです。経営者本人が誇りに思っている技術や設備が、実はお客様にとってはさほど重要ではなく、逆に本人が当たり前だと思っている対応の柔軟さこそが、お客様にとっての決め手になっている、というケースは珍しくありません。
強みは主観で決めるものではなく、外側からの視点で見つけるものだという前提に立つ必要があります。
棚卸し①:既存のお客様に、選んだ理由を直接聞く
最も確実な方法は、実際に自社を選んでくれたお客様に、その理由を直接尋ねることです。アンケートよりも、可能であれば会話形式で聞くことをおすすめします。
「なぜ他社ではなく、うちに依頼してくださったのですか」という質問に対する答えは、経営者が想定していたものと違うことがほとんどです。仮に、ある建築会社の社長が「技術力」こそ選ばれる理由だと思い込んでいたとします。
実際にお客様に聞いてみると「打ち合わせのときに、専門用語を使わずに説明してくれたから」という答えが多数を占める、というのはよくあるケースです。技術力は前提条件であり、決め手になっていたのは説明の分かりやすさだったのです。
5社から10社程度、できれば長年の取引先と、比較的新しい取引先の両方に聞くと、共通するキーワードが見えてきます。
棚卸し②:競合他社と、同じ項目で並べてみる
次に、主要な競合を3社から5社ほど挙げて、価格・納期・対応範囲・実績・発信内容など、同じ項目で表にして並べてみます。ここでのポイントは、自社に都合の良い項目だけを選ばないことです。
苦手な項目も含めて正直に並べることで、初めて「相対的に強い部分」が浮かび上がります。この作業をすると、多くの場合「実はどの会社も似たようなことを言っている」ことに気づきます。
「お客様第一」「高品質」「地域密着」といった言葉は、ほぼすべての競合が使っています。それでもなお、対応スピードや、特定の業界への実績、価格帯の設定など、数字や事実で語れる違いが必ずどこかに見つかります。
感覚的な言葉ではなく、事実として比較できる項目にこだわって表を作ることが重要です。
ここまでの整理を、さらに深めるには
こうした棚卸しを一人で最後まで詰め切るのが難しいと感じた場合は、外部の視点を入れながら整理する方法もあります。ブランドや世界観づくりの進め方は、こちらでも紹介しています。
棚卸し③:過去の意思決定を振り返り、断ってきたことを洗い出す
強みは、やってきたことだけでなく、あえてやらなかったことにも表れます。過去数年の間に、自社が断ってきた仕事や、あえて取り扱わなかった商品、参入しなかった価格帯を振り返ってみてください。
安売り競争に加わらなかった、量よりも一件ごとの丁寧さを優先してきた、特定の業界にしか対応してこなかった、といった判断の積み重ねは、そのまま自社が大事にしてきた価値観を映し出しています。この振り返りは、経営者一人では偏りが出やすいため、可能であれば創業からいる社員や、現場を長く見てきた管理職と一緒に行うことをおすすめします。
「なぜあのときあの仕事を断ったのか」を言葉にする過程で、これまで誰も明文化していなかった判断基準が見えてきます。
よくある失敗:強みを「良いところ」だと思い込むこと
棚卸しを進める際に、最も多い失敗は、強みを単なる「長所」や「自慢できる点」として集めてしまうことです。強みとは、お客様が実際にお金を払う理由になっている要素のことであり、単に自社が優れていると思っている点とは違います。
たとえば「創業50年の実績」は事実として立派ですが、それ自体がお客様の選ぶ理由になっているかどうかは別問題です。実績年数を強みとして打ち出す場合は、「なぜ50年続けてこられたのか」という中身まで踏み込んで初めて、お客様に伝わる強みになります。
棚卸しで集めた要素は、必ず「これは本当にお客様が選ぶ決め手になっているか」という視点でもう一度ふるいにかける必要があります。
注意:長所と強みは違う
「創業50年」のような事実は立派でも、それ自体がお客様の選ぶ理由になっているとは限りません。棚卸しで集めた要素は必ず『お客様が実際に選ぶ決め手になっているか』で再確認してください。
棚卸しの結果を、どう使うか
三つの棚卸しを終えると、手元にはお客様の声・競合との違い・自社の判断基準という、三種類の情報が揃います。ここから強みを言語化する際は、単語ではなく一文で表現することをおすすめします。
「対応力」ではなく「専門用語を使わずに、決断が早い経営者にも分かる説明ができる」というように、具体的な状況とセットで書き出すと、後で採用パンフレットにも、ホームページにも、営業トークにも、そのまま使える形になります。この一文は、一度作って終わりではなく、事業が変化するたびに見直す前提で扱ってください。
強みは固定されたものではなく、事業のフェーズに応じて変わっていくものだからです。
飲食店での棚卸し例:常連客への一言から見つかった強み
業種によって棚卸しのやり方は多少変わります。業種を問わずよくあるのが、個人経営の飲食店のケースです。
仮に常連客に「なぜここに通っているのか」を聞いてみると、「量」でも「味」でもなく「一人で入っても居心地が悪くないこと」を挙げる人が多い、ということがあります。繁盛店と比べて目立った強みがないと感じていた店主が、実は「一人客に気を遣わせない空気作り」という、数字には表れない強みを無意識に作り上げていた、というのは十分に起こり得る話です。
この気づきを店の外看板やSNSの発信文言に反映するだけでも、印象は大きく変わります。業種を問わず、お客様の何気ない一言の中に、強みのヒントは隠れています。
棚卸しにかかる時間と、一人で進める場合の工夫
三つの棚卸しをすべて丁寧に行うと、規模にもよりますが2週間から1か月程度かかることが一般的です。お客様への聞き取りだけでも、日程調整を含めると数週間かかることは珍しくありません。
忙しくてまとまった時間が取れない経営者の場合は、無理に一度にすべてを終わらせようとせず、週に1件だけお客様に聞く、月に1回だけ競合を見直す、といったペースでも構いません。重要なのは、思いついたときにやって終わりにするのではなく、期間を決めて意識的に情報を集め続けることです。
一人で進める場合は、聞き取った内容やメモをその場で書き残しておかないと、後から「結局何が強みだったか」を思い出せなくなりがちです。簡単なメモでよいので、必ずその日のうちに記録する習慣をつけてください。
創業したばかりで、まだお客様の声が少ない場合はどうするか
創業間もない、あるいは新規事業を立ち上げたばかりで、聞き取りができるお客様がまだ少ないという相談もよく受けます。この場合は、①既存のお客様が少数でも構わず率直に聞くこと、②前職や別事業での経験の中から、褒められた経験・感謝された経験を棚卸しすること、③まだ形になっていない事業であれば、なぜ自分がこの事業を始めようと思ったのかという原点を、強みの仮説として一旦置いておくこと、の三つを組み合わせます。
創業初期の強みは、事業を進める中で必ず変化していきます。今の時点で完璧な言語化を目指すのではなく、まずは仮説を立てて発信し、お客様の反応を見ながら磨き直していくという前提で取り組むのが現実的です。
競合調査は、どこを見れば効率よく進むか
競合を並べて比較する際、情報をどこから集めればよいか分からず手が止まってしまうことがあります。効率的なのは、競合のホームページやSNSの発信内容に加えて、口コミサイトやGoogleマップのレビューを読むことです。
特に星の低いレビューには、その会社が対応できていない部分、つまり自社が入り込める余地が具体的に書かれていることが多く、貴重な情報源になります。逆に星の高いレビューからは、その会社が何を評価されているのかが分かり、比較表の項目を作る際の参考になります。
価格については、価格.comのような比較サイトがある業種はそこから、無ければ実際に見積もりを取ってみるのが最も確実です。数字で比較できる情報ほど、社内での認識合わせがしやすくなります。
社内で意見が割れたときの、決着のつけ方
棚卸しを進めると、社員によって「うちの強みはこれだ」という意見が分かれることがあります。この場合、多数決や役職の上下で決めるのではなく、必ずお客様への聞き取り結果に立ち返ってください。
社内の主観がぶつかったときの判断基準は、社内の誰が正しいかではなく、お客様が実際に何を理由に選んでくれているかという事実です。この原則を先に決めておくと、意見が割れたときの議論が不必要に長引くことを防げます。
また、複数の強みが同時に見つかった場合は、無理に一つに絞る必要はありません。ただし、発信する際に一度にすべてを伝えようとすると散漫になるため、最も伝えたい一つを軸に置きつつ、他の要素は補足として添える、という優先順位はつけておくことをおすすめします。
まとめ
自社の強みが分からないという悩みは、強みが存在しないことを意味しません。多くの場合、それは棚卸しをしたことがないだけです。
お客様に理由を聞き、競合と事実で比較し、過去の判断を振り返る。この三つを丁寧に行うだけで、これまで社内でバラバラだった言葉が、一つの軸に収束していきます。
ここで見つかった強みは、ブランドや事業設計の土台になるものです。自分たちだけで整理するのが難しいと感じる場合は、外部の視点を入れながら進める方法もあります。
「棚卸しなんて時間の無駄では」という反論への答え
棚卸しの提案をすると、「そんなことをしている時間があれば、目の前の仕事を片付けたい」という反応が返ってくることがあります。この反応自体は自然なものです。
棚卸しは今日明日の売上に直結する作業ではなく、効果が見えるまでに時間がかかるからです。しかし、強みが言語化されていない状態のまま採用や営業を続けることは、的を絞らずに矢を放ち続けているようなものです。
パンフレットの文言も、面接での受け答えも、営業トークも、その場しのぎで言葉を選び続けることになり、結果的に一貫性のない発信に時間を使い続けてしまいます。棚卸しにかける数週間は、その後何年も使い続ける判断基準を作るための投資であり、目の前の仕事を止めてまで行う特別な作業ではなく、日々の業務の合間に少しずつ進められる性質のものです。
関連する事業設計を整理するなら、ターゲットの決め方|事業を広げる前に確認すべき順番も参考になります。
棚卸しの結果は、採用・営業以外にもこう使える
強みの言語化が完了すると、その使い道は採用パンフレットや営業トークだけにとどまりません。取引先への与信説明、金融機関への事業計画の説明、新卒採用の面接での逆質問への回答、さらには社内で新しい判断に迷ったときの基準としても機能します。
例えば、棚卸しで見つかった「小ロットでも即対応する」という強みを、新規事業を検討する際の判断基準に転用できたとしたらどうでしょうか。検討中の新事業がこの強みを活かせるかどうかを基準に置くだけで、事業の取捨選択にかかる議論の時間は大幅に短縮されるはずです。
棚卸しは一度きりの広報用の作業ではなく、経営判断そのものに使える資産になります。
サービス業での棚卸し例:クレームの中にあった強みのヒント
強みは、褒め言葉の中だけでなく、クレームの中にも隠れていることがあります。仮に、訪問介護の事業所で利用者の家族から「担当がころころ変わるのは困る」という声が寄せられていたとします。
実際には離職率が業界平均より低く、担当変更の頻度も少ない部類だったとしても、変更時の引き継ぎ方法を説明していなければ、不満は解消されません。担当変更時に必ず本人同席で申し送りを行う、変更の少なさをパンフレットに明記するといった対応を取れば、もともとあった定着率の高さという強みが、初めて伝わる形になります。
これは説明の欠如によって強みが伝わっていなかった典型的なケースです。この積み重ねが、後から振り返ったときにその会社らしさそのものになっていきます。
自社だけで強みの言語化を進めるのが難しい場合はお問い合わせから相談することもできます。
強みを言語化した先の、ブランド全体の設計まで進めたい方は
CATARIVEの世界観設計の考え方この内容、うちの場合はどうなる?を、直接聞いてみませんか。
Web・EC・広告・AI活用まで、事業の現在地に合わせてCATARIVEがお話をお伺いします。
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