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ターゲットの決め方|事業を広げる前に確認すべき順番
ターゲットの決め方とは、事業を広げる前に「誰に何を届けるか」を先に固定する判断のことです
ターゲットの決め方とは、新しい事業や商品を検討する前に、誰に、何を、なぜ届けるのかを先に言語化しておく判断のことです。要点は3つあります。
1つ目は、決めるタイミングは事業を広げた後ではなく、広げる前だということ。2つ目は、決め方の軸は好みではなく、既存事業で「なぜ選ばれているか」から逆算すること。
3つ目は、決めないまま進めると、発信・商品・社内の判断基準という3か所に同時にひずみが出るということです。事業を広げようとする局面では、新しい可能性の方に目が向きがちで、ターゲットを言語化する作業は後回しにされやすくなります。
しかし、この作業を飛ばしたまま広告や商品開発を先に進めると、後から軌道修正するコストは、決める作業そのものより何倍も大きくなります。
「ターゲットを絞ると、機会を逃すのではないか」という反論からよく検討が止まる
「ターゲットを絞ると、機会を逃すのではないか」という反論は根強く残っています。仮に間口を広げておけば、想定していなかった層からの問い合わせも取りこぼさずに済むという考え方自体は、理屈として理解できます。
ただし、この反論には見落としがあります。ターゲットを決めることは、対応するお客様を制限することではなく、最初に届ける言葉と商品の軸を決めることです。
間口を広げるかどうかは、その軸を決めた後に検討すればよい話であり、順番が逆になっているケースがほとんどです。よくあるケースとして、事業拡大の検討で「できるだけ多くの人に届けたい」という要望から入ると、結局どの言葉も刺さらない発信に落ち着いてしまう、という展開がよく見られます。
間口の広さと、軸の有無は別の議論だと切り分けて考える必要があります。
関連する事業設計を整理するなら、経営理念の言語化|想いを伝わる言葉に変える5つの手順も参考になります。
でも、最初からターゲットを絞ってしまうと、可能性を狭めてしまう気がするんですが。
起きること①:発信の言葉が、誰にも刺さらない総花的な表現になる
ターゲットを決めずに事業を広げたときに、最初に表面化するのが発信の言葉です。例えば、既存事業では「忙しい経営者向けに、意思決定を早める資料をつくる」という明確な軸があったとします。
そこに、若年層向けの新しいサービスを、軸を言語化しないまま追加するとどうなるか。ウェブサイトのトップページには両方の要素を盛り込もうとして、結局「あらゆる方のニーズにお応えします」という、誰の記憶にも残らない表現に落ち着きます。
この状態になると、広告文もSNSの投稿も、当たり障りのない言葉を選ばざるを得なくなります。特定の誰かに向けて書いた言葉の方が、結果的に多くの人に届くという逆説は、発信の現場でよく起きる現象です。
ターゲットを決めないまま事業を広げると、この逆説を体験する前に、無難な表現へ逃げてしまいます。
起きること②:商品・サービスのラインナップが、際限なく増えていく
次に起きるのが、商品・サービスのラインナップの際限ない増加です。ターゲットの軸が定まっていない状態で新しい要望に応え続けると、「頼まれたからやる」の連続でメニューが増えていきます。
仮に元々は法人向けのコンサルティングを提供していた会社が、個人向けの相談サービスも「頼まれたから」という理由で始めたとします。単発では悪い判断に見えなくても、これが3件、5件と積み重なると、会社が何の専門家なのか、外から見て分からなくなります。
ラインナップが増えること自体は悪いことではありませんが、増やす基準が「頼まれたか」だけになっている状態は危険です。基準が無いまま広げたメニューは、需要が落ち着いた瞬間に整理する判断もできず、社内のリソースだけを消費し続けることになります。
注意:「頼まれたから」だけを基準にしない
個別の依頼に応えること自体は問題ではありません。ただし、応じるかどうかの基準が「頼まれたか」しかない状態が続くと、後から整理できないメニューだけが積み上がります。
起きること③:社内の判断基準が「売れそうか」だけになり、軸がぶれる
3つ目に起きるのが、社内の判断基準が「売れそうか」だけに単純化されることです。ターゲットが明確であれば、新しい提案が来たときに「このお客様に届く提案か」という基準で判断できます。
軸が無いと、この基準が使えないため、代わりに「儲かりそうか」「話題になりそうか」という短期的な基準だけが残ります。仮に複数の事業案が同時に持ち上がったとき、軸が無い会社では声の大きい人の意見や、直近の売上が優先されやすくなります。
長期的にブランドを積み上げるための判断が、その場その場の事情に流されてしまうのです。この状態が続くと、数年後に振り返ったときに、一貫した実績として語れる事業が育っていない、という状況に陥りやすくなります。
軸を決めるステップ1:既存事業の「なぜ選ばれているか」から逆算する
軸を決める最初のステップは、既存事業の売上や利益の数字ではなく、なぜお客様に選ばれているかを言葉にすることです。売上の大きさは、選ばれている理由を教えてくれません。
既存のお客様に、なぜ他社ではなく自社を選んだのかを直接聞いてみると、社内で思っていた強みと、お客様が実際に評価している点がずれていることがよくあります。例えば、社内では「対応の速さ」を強みだと思っていても、お客様は「専門用語を使わずに説明してくれる分かりやすさ」を評価している、といったズレです。
このズレを把握しないまま新規事業のターゲットを決めると、既存事業の本当の強みを活かせない方向に進んでしまいます。既存のお客様への簡単なヒアリングは、時間をかけずに実施できる割に、軸を決める材料としての精度が高い方法です。
既存のお客様に直接聞くのは、少し気が引けるのですが。
軸を決めるステップ2:新しい挑戦を、既存ターゲットとの距離で位置づける
次のステップは、新しい挑戦のターゲットを、既存ターゲットとの距離で位置づけることです。距離が近いほど、既存の顧客リストや実績をそのまま活かせます。
距離が遠いほど、新しく信頼を積み上げる必要があり、時間もコストもかかります。仮に、法人の経営者向けに事業をしてきた会社が、その経営者の家族向けに新しいサービスを始めるとします。
これは距離が比較的近いケースで、既存の信頼関係を土台にできます。一方で、全く接点の無かった業界や年齢層に挑戦する場合は、距離が遠く、既存事業のブランドが直接的には力を貸してくれません。
距離を意識しないまま新規事業を決めると、既存事業のブランドがどこまで新規事業を後押ししてくれるかを見誤り、想定より多くの投資が必要になってから気づく、という展開になりがちです。距離が遠い挑戦を選ぶこと自体が誤りというわけではありません。
ただし、その場合は既存事業の実績をそのまま借りられない前提に立ち、認知を広げるための期間と予算を、距離が近い場合よりも余分に確保しておく必要があります。
距離を測る簡単な確認方法
新しいターゲットに、既存事業の実績や紹介文をそのまま見せて意味が通じるかを試してみてください。説明を大きく作り直す必要があるなら、距離は遠いと考えた方が安全です。
軸を決めるステップ3:広げる前に「誰に断るか」を先に言葉にする
3つ目のステップは、事業を広げる前に誰に断るかを先に言葉にしておくことです。ターゲットを決めるという作業は、届けたい相手を選ぶと同時に、届けない相手を決める作業でもあります。
仮に「幅広い年齢層に対応します」という方針のままだと、誰に断るかが決まっていないため、どんな要望が来ても社内で対応するかどうかの判断に時間がかかります。逆に、こういう要望には今回は対応しない、という基準を先に言葉にしておけば、個別の判断に迷う場面が大きく減ります。
断る基準を決める作業は、事業を狭める後ろ向きな作業に見えるかもしれませんが、実際には社内の判断スピードを上げるための前向きな準備です。ここまでの軸の決め方を、ロゴやキャッチコピーを含めたブランド全体の設計に広げて考えたい場合は、CATARIVEの世界観設計の考え方も参考にしてください。
軸の決め方をブランド全体の設計まで広げたい方は
CATARIVEの世界観設計の考え方失敗パターン:複数の事業を「なんとなく同じお客様向け」としてまとめてしまう
よくある失敗パターンが、複数の事業を「なんとなく同じお客様向け」として一括りにしてしまうことです。仮にA事業とB事業のお客様が、年齢層や業種としては近く見えても、実際に求めているものが違う場合、同じ発信・同じ営業トークで両方をカバーしようとすると、どちらのお客様にも中途半端な印象を与えます。
よくあるケースとして、既存事業の顧客リストに新規事業の案内を一斉送信し、既存事業のお客様から関係ない案内が増えたという反応をもらってしまう、という失敗もあります。事業ごとにターゲットが違うのであれば、発信のチャネルや言葉づかいも事業ごとに分けて設計する必要があります。
同じ会社が出している情報だからまとめて発信した方が効率的、という考え方が、かえって両方の事業の印象を薄める結果につながることがあります。
同じ会社が出しているなら、まとめて発信した方が手間も省けそうですが。
代替手段:あえてターゲットを分けたブランドを併走させる場合の注意点
軸を分けてブランドを併走させるという選択肢もあります。既存事業と新規事業のターゲットの距離が遠い場合、無理に1つのブランドでまとめようとせず、あえて社名やロゴを分けて運用する方法です。
この方法を選ぶ場合に注意したいのは、分けた分だけ、それぞれのブランドを育てる手間も倍になるという点です。仮に、経営体力に余裕が無い段階で複数のブランドを同時に立ち上げると、どちらも中途半端な認知のまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。
ブランドを分けるかどうかの判断は、ターゲットの距離だけでなく、社内のリソースをどちらに割けるかという現実的な制約も合わせて検討する必要があります。分けると決めた場合でも、実務上のバックオフィスや問い合わせ窓口は共通化するなど、運用コストを抑える工夫は可能です。
新規事業だけでなく、既存事業のリニューアルでも同じ順番が必要になる
ここまでは新しい事業を始める場面を中心に説明してきましたが、同じ判断は既存事業のリニューアルでも必要になります。仮に、長く運営してきたサービスのロゴやウェブサイトだけを新しくする場合でも、ターゲットを決め直さないままデザインだけを変えると、見た目は新しくなったのに、誰に向けた発信なのかが以前より分かりにくくなる、という結果につながることがあります。
リニューアルは、ゼロから事業を立ち上げるときほどの緊張感を持ちにくく、ターゲットの確認を省略して「今の延長線上で見た目だけ整える」という進め方になりがちです。しかし、事業を続けている間にお客様層が少しずつ変化していることは珍しくありません。
リニューアルのタイミングは、デザインを刷新する機会であると同時に、今のお客様が本当に想定通りかを確認し直す機会でもあります。デザインを発注する前に、この確認を済ませておくと、出来上がったデザインを見てから方向性のズレに気づく、という手戻りを防げます。
ターゲットを決める作業を、経営者一人で抱え込まない方がいい理由
ターゲットの決め方は、最終的な判断こそ経営者が行うべきですが、検討の過程を経営者一人だけで抱え込むと、社内で共有されにくいまま決定事項だけが降りてくる、という状態になりやすくなります。仮に、現場でお客様と直接やり取りしている社員が、経営者の想定とは違う手応えを感じていたとしても、検討の場に呼ばれていなければ、その情報は反映されません。
営業や接客の現場に近い社員は、経営者よりも先に、お客様の反応の変化に気づいていることがあります。ターゲットを決める話し合いに、こうした現場の声を短時間でも取り入れておくと、机上の想定と実際のお客様像のズレを早い段階で修正できます。
決定権を分散させる必要はありませんが、情報を集める段階までを一人で完結させないことが、決め方の精度を上げる現実的な工夫です。
よくある質問
Q. ターゲットを決めても、途中で変えることはできますか。可能です。
ただし、変える際は既存のお客様への影響を確認した上で、発信のトーンを段階的に調整してください。急に方針を変えると、既存のお客様が置いていかれたと感じることがあります。
Q. 小さな会社でも、ターゲットを厳密に決める必要がありますか。会社の規模にかかわらず、決める作業自体は必要です。
ただし、決めた軸をどこまで厳密に運用するかは、事業の規模に合わせて調整して構いません。Q. ターゲットを決めた後、想定外の層から問い合わせが来た場合はどうすればいいですか。
対応するかどうかは、決めておいた誰に断るかの基準に照らして、その都度判断すれば十分です。全ての例外に軸を合わせて広げ直す必要はありません。
Q. 複数の事業を持つ場合、全社共通のターゲットを1つに決めるべきですか。事業ごとにターゲットが異なるのであれば、無理に1つにまとめる必要はありません。
事業ごとの軸を明確にした上で、それぞれの関係性を整理する方が現実的です。Q. 市場環境が大きく変わった場合、ターゲットもすぐに見直すべきですか。
短期的な変化にその都度反応して見直すと、社内の判断がかえって不安定になります。数か月単位の一時的な変化であれば、まず誰に断るかの基準を運用の範囲で柔軟にする程度に留め、半年から1年ほど状況を見てから、軸そのものを見直すかどうかを判断する方が、社内も現場も混乱しません。
まとめ
ターゲットを決めずに事業を広げると、発信の言葉、商品のラインナップ、社内の判断基準という3か所に、ほぼ同時にひずみが出ます。軸を決める作業は、既存事業でなぜ選ばれているかを言葉にし、新しい挑戦との距離を測り、誰に断るかを先に決めるという3つのステップで進められます。
事業を広げる前にこの順番を一度通しておくだけで、後から軌道修正するコストの多くは避けられます。ターゲットの決め方から、ブランド全体の設計まで含めて相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。
この内容、うちの場合はどうなる?を、直接聞いてみませんか。
Web・EC・広告・AI活用まで、事業の現在地に合わせてCATARIVEがお話をお伺いします。
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