Blog
事業計画書とブランドコンセプト|同時に作るべき理由
事業計画書とブランドコンセプトは、同時に作ることで数字とらしさのズレを防げます
事業計画書とブランドコンセプトを同時に作るとは、資金計画や売上計画といった数字の設計と、誰に何を届ける会社なのかという軸の設計を、別々の作業として順番に進めるのではなく、同じ工程の中で行き来させながら作ることを指します。要点は3つあります。
1つ目は、数字だけを先に固めると、後からブランドの軸を合わせようとしても事業の中身と数字が噛み合わなくなるということ。2つ目は、ブランドコンセプトだけを先に作っても、それが売上計画や資金使途に反映されていなければ、事業計画書の中では存在しないのと同じ扱いになるということ。
3つ目は、同時に作る場合でも片方をもう片方に完全に従属させるのではなく、行き来しながら整合性を取る進め方の方が現実的だということです。事業計画書は数字の書類、ブランドコンセプトは感覚の資料、と切り分けて考えている経営者ほど、このズレに後から気づきにくい傾向があります。
なぜ、事業計画書とブランドコンセプトは別々の作業として進んでしまうのか
多くの場合、事業計画書は税理士や商工会議所、金融機関の担当者と一緒に数字を積み上げる作業として進み、ブランドコンセプトはデザイナーやコピーライターと一緒に言葉やビジュアルを詰める作業として進む。関わる相手も使う言葉も違うため、自然と別のタイミング・別の担当領域に分かれていく。
さらに、事業計画書には提出期限があることが多く、融資審査や補助金申請のスケジュールに合わせて数字だけを先に仕上げ、ブランドの整理は「落ち着いたら後で」と後回しにされやすい。この分業自体が悪いわけではないが、両者の担当者同士がすり合わせをしないまま進むと、数字の前提とブランドの前提が別々の会社の話のようにずれていく。
事業計画書を書く工程そのものに、ブランドの軸を確認する場面を意図的に組み込んでおく必要がある。
数字だけ先に固めた事業計画書が、後から機能しなくなる理由
売上計画の客数や単価は、本来「誰に何を届けるか」というブランドの前提から逆算して決まるはずの数字です。ところが数字を先に固める進め方では、業界平均や過去の実績から機械的に客数と単価を当てはめてしまい、その数字がどんな顧客像を前提にしているのかが誰の頭にも残らないまま計画書だけが完成する。
仮に、客単価を業界平均に合わせて設定した事業計画書があったとして、実際の接客やウェブサイトでは高価格帯の顧客に向けた世界観を打ち出していたとする。この場合、数字上の計画と現場で実際に届けようとしている価値がずれており、どちらかを後から修正することになる。
数字は説得力があるように見えても、その数字を成立させる前提が言語化されていなければ、事業が進むにつれて計画と実態の距離が広がっていく。
数字さえ現実的であれば、ブランドは後から調整すればいいのではないですか。
ブランドコンセプトだけ先に作っても、事業計画に反映されなければ意味がない
反対に、ブランドコンセプトを丁寧に作り込んでいても、それが事業計画書の数字に一切反映されていないケースも同じ問題を抱えている。世界観やコンセプトのページには独自の強みや理念が書かれているのに、売上計画の欄では価格帯も客層も一般的な相場に沿った数字がそのまま使われている、という状態である。
この場合、金融機関や投資家が見るのは主に数字の欄であるため、コンセプトで語っていた独自性が計画書全体には反映されず、他社と見分けのつかない事業として評価されてしまう可能性がある。ブランドコンセプトは、パンフレットやウェブサイトに載せるための言葉として作るのではなく、価格設定・客数見込み・投資配分といった数字の根拠として機能させて初めて、事業計画書の中で意味を持つ。
同時に作る進め方①:誰に何を届けるかを、数字を置く前の前提として先に固定する
同時に作る場合、最初にやることは数字を並べることではなく、誰に何を届ける事業なのかを短い言葉で固定することである。この段階では詳細なコンセプトワークまで作り込む必要はなく、想定する顧客像と、その顧客が他ではなく自社を選ぶ理由を、1〜2文で言語化できれば十分である。
この前提が決まって初めて、客単価や客数、必要な設備投資といった数字が「その前提に沿っているかどうか」で判断できるようになる。前提を先に固定せずに数字の検討に入ると、途中で顧客像がぶれるたびに数字も作り直すことになり、結果として事業計画書の完成が何度も遅れる原因になる。
同時に作る進め方②:売上計画の単価と客数に、ブランドの立ち位置を反映させる
顧客像が固定できたら、その顧客像に見合う単価と客数を、業界平均をそのまま使うのではなく、自社の立ち位置に沿って調整する。例えば、量よりも一件あたりの深い関わりを重視する立ち位置であれば、客数を控えめに見積もり、単価と継続率を高めに設定する計画の方が、ブランドの前提と整合する。
逆に、幅広い層に手に取ってもらう立ち位置であれば、単価は抑えめにし、客数と回転率で売上を作る計画の方が自然である。どちらが優れているという話ではなく、ブランドの立ち位置と数字の作り方が一致しているかどうかが重要になる。
ここがポイント
業界平均の単価をそのまま使う前に、その単価が自社の顧客像と本当に合っているかを一度確認する。合っていなければ、平均値ではなく自社の立ち位置に沿った数字に置き換える。
同時に作る進め方③:資金使途の説明に、ブランドコンセプトの言葉を一言添える
融資や出資の相談では、資金使途の欄に設備投資や運転資金の内訳を書くことになるが、多くの計画書はここを金額の羅列だけで終わらせてしまう。同じ設備投資でも、なぜその設備が必要なのかをブランドの前提と結びつけて一言添えるだけで、数字の説得力は大きく変わる。
仮に、内装工事費を計上する場合、単に「内装工事費300万円」と書くのではなく、想定する顧客層にどのような体験を提供するための内装なのかを添える、といった具合である。金融機関の担当者は数字そのものよりも、その数字が事業全体の一貫性の中でどう位置づけられているかを見て判断していることが多い。
事業の相談を始める段階から、数字と言葉を切り離さない準備をしておくと、後の説明が格段にしやすくなる。まずはお問い合わせから、自社の事業計画と世界観の整理を一緒に相談してみるのも一つの方法である。
創業したばかりで、顧客像も数字も手探りの場合はどう進めるか
創業前や創業直後は、実際の顧客がまだいないため、顧客像を固定しようにも根拠となる材料が乏しい。この場合でも、顧客像を後回しにしてよいわけではなく、仮説の精度が粗くても構わないので、想定する顧客像を一度言葉にしてから数字の検討に入る方がよい。
よくあるケースとして、創業計画書のテンプレートに沿って業種平均の数字を先に埋め、顧客像の欄は最後に簡単な一文で済ませてしまう進め方がある。これでは数字と顧客像の結びつきが弱いまま計画書が完成し、実際に事業を始めた後で想定と違う客層が来た時に、どの数字を見直すべきかの判断がつきにくくなる。
仮説段階であっても、なぜその客層・その単価を選んだのかという理由まで一緒に書き残しておくと、後で計画を修正する際の起点になる。
よくある失敗パターン:数字は説得力があるのに、事業の中身が伝わらない計画書
実際によく見られる失敗は、数字の積み上げ自体は緻密で矛盾がないのに、読み手に「結局この事業は何をしたい会社なのか」が伝わらない計画書である。売上高・原価率・利益率の推移表は整っているが、なぜその顧客に選ばれるのか、他の選択肢ではなく自社が選ばれる理由がどこにも書かれていない、という状態がこれにあたる。
この場合、金融機関側は数字の実現可能性には納得できても、その事業が本当に計画通りの数字を作れるだけの独自性を持っているかどうかを判断する材料が不足していると感じやすい。数字の精度を上げる前に、その数字を成立させる理由が計画書のどこかに言葉として存在しているかを、一度確認しておく価値がある。
代替手段:外部の専門家に依頼する場合、どちらを先に見せるべきか
税理士や中小企業診断士に事業計画書の作成を依頼し、デザイナーやブランディング会社にコンセプト作りを依頼する、という分業自体は珍しくない。この場合に注意したいのは、どちらか一方が完成してから他方に渡すのではなく、顧客像と立ち位置についての簡単なメモの段階で、両方の担当者に同時に共有しておくことである。
数字の専門家に先に完成した数字だけを渡すと、後からブランド側の事情に合わせて数字を作り直す手間が発生しやすい。逆にコンセプトを先に完成させてから数字の専門家に渡すと、数字側の制約とコンセプトが噛み合わず、コンセプトの一部を諦めることになる場合もある。
どちらの専門家にも、確定した成果物ではなく、検討中の前提の段階で情報を渡しておく方が、後の手戻りが少なくなる。
複数の事業やブランドを一つの会社で運営している場合、事業計画書はどう書き分けるか
一つの会社で複数の事業やブランドを展開している場合、事業計画書を一本にまとめると、それぞれの顧客像や立ち位置が異なるにもかかわらず、数字だけが合算されて全体像がぼやけてしまうことがある。この場合は、会社全体の数字とは別に、事業やブランドごとに顧客像と数字の対応関係を分けて整理しておく方が、後から見返したときに判断しやすい。
仮に、法人向けの高単価事業と個人向けの低単価事業を一社で運営している場合、両方を同じ客数・単価の考え方で説明しようとすると、どちらの数字も説得力を欠く。事業ごとに前提が異なることを認めた上で、それぞれの前提に沿った数字を作り、最後に合算して全体の計画書にまとめる順番の方が、個々の事業の説明にも無理が出にくい。
関連する事業設計を整理するなら、ターゲットの決め方|事業を広げる前に確認すべき順番も参考になります。
同時に作ることが、金融機関以外の相手にも効く理由
事業計画書とブランドコンセプトの整合性は、融資審査の場面だけで問われるわけではない。取引先との商談、採用面接での説明、業務委託先への発注時の説明など、事業の数字と中身を同時に説明する場面は経営を続ける限り繰り返し発生する。
そのたびに、数字の説明とブランドの説明がバラバラな言葉で語られると、聞き手はその都度「結局どちらが本当なのか」を自分で解釈しなければならなくなる。事業計画書を作る段階でこの整合性を一度整えておけば、以降のあらゆる場面での説明が、同じ前提から派生した言葉で行えるようになる。
事業計画書は一度提出して終わる書類ではなく、事業の考え方を確認するための土台として、必要になるたびに読み返す前提で作っておく方がよい。
資金調達の相談で、実際によく聞かれること
資金調達の相談の場では、数字の根拠だけでなく「なぜあなたがこの事業をやるのか」「なぜこの価格・この客層なのか」といった、ブランドの前提に関わる質問を受けることが多い。数字だけを丸暗記して臨むと、こうした質問に対して数字とは別の言葉で急いで説明することになり、説明のたびに前提が微妙に変わってしまうことがある。
事業計画書の中にブランドの前提が言葉として整理されていれば、こうした質問にも計画書に書いた内容をそのまま延長する形で答えられる。想定質問への回答をあらかじめ用意しておくこと自体は特別な準備ではないが、その回答の軸が事業計画書の数字と食い違っていないかどうかは、提出前に必ず確認しておきたい点である。
※事業の軸そのものから整理したい場合はこちら
世界観設計の考え方経営者自身が、数字の言葉とブランドの言葉の両方を扱えるようにしておく
税理士に数字を任せ、デザイナーやブランディング会社に言葉を任せる分業は有効だが、その橋渡しを最終的に担えるのは経営者本人しかいない。数字の専門家はブランドの前提までは踏み込まず、ブランドの専門家は資金計画の制約までは把握していないことが多いため、両者の間で前提がずれていないかを確認する役目は、依頼した外部の専門家ではなく発注する側に残る。
経営者が数字だけ、あるいは言葉だけを理解していればよいという状態から抜け出し、両方の前提を自分の言葉で説明できる状態を目指しておくと、専門家に依頼する際の指示も的確になり、出来上がった事業計画書を自分で点検できるようになる。
数字もブランドも専門家に任せているので、経営者は詳しくなくてもよいのではないですか。
事業計画書は一度作って終わりではなく、更新のたびにブランドの前提も見直す
事業計画書は融資審査や補助金申請の一度きりの提出物として扱われがちだが、実際には決算のたびや事業のフェーズが変わるたびに更新することになる書類である。数字だけを更新し、前提となっていた顧客像やブランドの立ち位置を見直さないまま数字を積み増していくと、数年後には最初に固定した前提と実際の事業内容が大きくずれていることがある。
事業計画書を更新するタイミングを、単なる数字の入れ替え作業ではなく、顧客像や立ち位置がまだ現状に合っているかを確認する機会として使うと、数字とブランドのズレが大きくなる前に修正できる。更新のたびに前提から見直す習慣を持っている会社ほど、数字とブランドの整合性が長期にわたって保たれやすい。
まとめ:数字とブランドは、別工程ではなく同じ工程の中で行き来させる
事業計画書とブランドコンセプトを同時に作るとは、両方を一気に完成させることではなく、顧客像という前提を先に固定し、その前提に沿って数字とコンセプトの言葉を行き来させながら整えていく進め方を指す。数字だけを先に固めれば後からブランドとのズレに苦しみ、コンセプトだけを先に固めれば数字に反映されないまま計画書の説得力を落とすことになる。
どちらか一方を優先するのではなく、同じ前提から数字と言葉の両方を組み立てていく意識を持っておくと、事業計画書は提出用の書類にとどまらず、事業を進める上での判断基準としても機能するようになる。事業計画とブランドの軸を同時に整理したい場合は、お問い合わせから現状の状況を相談してみてほしい。
この内容、うちの場合はどうなる?を、直接聞いてみませんか。
Web・EC・広告・AI活用まで、事業の現在地に合わせてCATARIVEがお話をお伺いします。


