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社会保険・障害者雇用の義務は何人から|2026〜2035年改正カレンダーと準備
社会保険・障害者雇用の義務は、従業員数が法律で定められたしきい値を超えた時点で切り替わります
従業員数に応じて変わる社会保険・障害者雇用の義務とは、会社の従業員数が法律で定められた人数のしきい値を超えた時点で、新たな手続きや費用負担が発生する制度のことです。結論を先に言うと、この義務は「組織が大きくなって大変になる」という経験則の話ではなく、特定の人数を超えた瞬間に発生する法律上の期限です。
要点は3つです。①2026年7月から障害者雇用の義務対象が従業員37.5人以上に広がった②2027年10月以降、社会保険の適用対象が段階的に36人以上→21人以上→11人以上→10人以下の企業まで広がる③しきい値を超えてから準備するのではなく、超える前に担当業務の分担と手続きの仕組みを整えておく必要がある、です。
2026年7月から変わった、障害者雇用義務の対象人数
2026年7月1日、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられ、雇用義務の対象となる企業の範囲が従業員40人以上から37.5人以上へ広がりました。短時間労働者は原則0.5人として計算するため、パート・アルバイトを含めた実質的な人数で判断する必要があります。
対象企業で不足が生じた場合、従業員100人を超える企業は不足1人につき月5万円の納付金が発生します。注意したいのは、毎年6月1日時点の雇用状況を報告する「ロクイチ報告」です。
37.5人基準での報告が始まるのは2027年6月1日分からで、2026年6月1日時点の報告はまだ従来基準(40人以上・2.5%)のままという点です。基準の変更と報告のタイミングがずれているため、どちらの基準で今の自社を確認すべきか混同しないようにします。
2027年10月以降、社会保険の適用対象は段階的に広がっていきます
もう一つの大きな変化は、短時間労働者への社会保険(健康保険・厚生年金)の適用拡大です。日本年金機構の案内によれば、2027年10月に、厚生年金保険の被保険者数36人以上の企業等が対象になります。
その後は段階的に対象が広がり、21人〜35人の企業は2029年10月、11人〜20人の企業は2032年10月、10人以下の企業は2035年10月に、それぞれ新たに対象になる予定です。対象者の要件は週20時間以上の勤務、学生でないこと、所定内賃金が月8.8万円以上であることなどですが、厚生労働省の案内では、この賃金要件(月8.8万円)は2026年10月に撤廃される予定とされています。
つまり、人数の基準だけでなく、対象者を判断する条件自体も変わっていく点を合わせて確認しておく必要があります。
段階スケジュールは一度に覚えなくてよい
2027年10月(36人以上)→2029年10月(21人以上)→2032年10月(11人以上)→2035年10月(10人以下)の順に対象が広がります。自社の現在の人数から、次にどの期限が当てはまるかだけを確認すれば十分です。
具体例|従業員36名の会社が、義務の切り替わりに気づいた時期
仮に、従業員36名のサービス業の会社を例に考えます。この会社は短時間労働者を含めて経理担当1人がすべての社会保険・労務手続きを管理していましたが、2027年10月の社会保険適用拡大の対象人数が「36人以上」であることを知らずに、翌年の人員計画だけを見て人を増やす準備を進めていました。
たまたま取引先から法改正の話を聞いて確認したところ、自社がすでに対象の人数に達していることが分かり、短時間労働者を含めた対象者の洗い出しと説明を数ヶ月で終える必要が生じました。問題の本質は、人数を数え間違えたことではありません。
従業員数と法律上の義務がどこで結びつくかを、日頃から確認する仕組みがなかったことでした。
ステップ1|自社の現在の人数と、直近のしきい値を確認する
最初に行うのは、自社の従業員数(短時間労働者を0.5人換算した人数と、厚生年金保険の被保険者数の両方)を数え、直近でどのしきい値に近いかを確認することです。障害者雇用では37.5人、社会保険では36人・21人・11人・10人という節目があります。
多くの会社は「今は関係ない」と感じる人数であっても、1〜2年後の採用計画次第でしきい値を超える可能性があります。棚卸しの際は、現在の人数だけでなく、今後1〜2年の採用計画を踏まえて「いつ、どの義務が追加されるか」までセットで確認します。
ステップ2|しきい値を超える前に、誰が何を準備するかを決めておく
しきい値を超えてから対応を始めると、対象者への説明、手続きの準備、必要なら求人要件の見直しまで、短期間で複数の作業が重なります。超える前にやっておきたいのは、担当者を決めて、対象になった場合に必要な手続きの一覧と、その手続きを「誰が」「どの情報を見て」進めるかを明文化しておくことです。
経理・労務担当が1人しかいない会社では、この準備自体が後回しになりやすいため、担当業務の棚卸しとあわせて進めます。
担当業務の棚卸しから進め方を整理したい場合は
Business Systems Auditを見る短時間労働者が多い業種ほど、しきい値に早く近づきます
障害者雇用義務も社会保険適用拡大も、短時間労働者を0.5人(障害者雇用)または条件を満たす人数として個別に数える仕組みです。そのため、正社員だけで人数を数えている会社ほど、実際のしきい値への近さを見誤りやすくなります。
例えば、正社員20名・短時間労働者を合わせて数えると0.5人換算で40人相当になる小売・サービス業の会社は、正社員の人数だけ見ていると「まだ余裕がある」と感じやすい一方、短時間労働者を含めた実質人数ではすでに37.5人のしきい値に達している場合があります。短時間労働者の比率が高い業種(飲食、小売、宿泊など)ほど、正社員数だけでなく実質人数での確認を優先する必要があります。
賃金要件の撤廃で、これまで対象外だった人も新たに対象になり得ます
社会保険適用拡大の対象者要件には「所定内賃金が月8.8万円以上」という条件がありましたが、厚生労働省の案内ではこの賃金要件が2026年10月に撤廃される予定とされています。これにより、週20時間以上働いているものの賃金が月8.8万円に届かず、これまで対象外だった短時間労働者も、賃金要件の撤廃後は新たに対象に含まれる可能性があります。
つまり、企業の従業員数がしきい値に達していなくても、賃金要件の変更だけで対象者の人数が増えるケースがある点は見落とされやすいところです。人数のしきい値と、対象者の条件の両方が同時に変わっていく期間であることを踏まえて確認します。
担当者が1人しかいない会社ほど、しきい値の見落としが起きやすい理由
法改正によるしきい値の変更は、官公庁の発表や専門家からの案内を日常的に追っている担当者がいれば気づきやすいものですが、経理・労務を1人で兼務している会社では、日々の処理業務に追われて法改正の確認が後回しになりがちです。これは個人の能力の問題ではなく、確認を担う役割が明文化されていないことが原因です。
しきい値の確認を「気づいたら誰かがやる」ではなく、四半期や半期ごとに「現在の人数」と「直近の期限」を照合する役割として誰かに割り当てておくことで、担当者が1人であっても見落としを防ぎやすくなります。
法改正カレンダーは一度作れば終わりではなく、更新が必要です
本記事で示した2026年7月・2027年10月・2029年10月・2032年10月・2035年10月というスケジュールは、2026年10月時点で確認できる情報にもとづいています。社会保険や障害者雇用に関する基準は、今後の法改正でさらに見直される可能性があります。
そのため、一度カレンダーを作って終わりにせず、年に1回程度、厚生労働省や日本年金機構など一次情報の案内を確認し直すタイミングを、社内の年間スケジュールにあらかじめ組み込んでおくことが安全です。
「30人の壁」という経験則と、法律上のしきい値は別のものです
組織論でよく語られる「30人の壁」は、社長一人が全員の状況を把握できなくなる人数として経験的に語られる目安であり、学術的に確立した法則ではありません。1対1の関係性コストは人数が増えるほど急増し、10人であれば45通り、30人であれば435通りという関係の組み合わせになる、という説明がよく使われます。
これは組織運営が難しくなる理由の説明として参考になりますが、本記事で扱う障害者雇用(37.5人)や社会保険の適用拡大(36人・21人・11人・10人)は、経験則ではなく法律で定められた期限です。組織が感覚的に重くなる人数と、法律上の義務が増える人数は近い場合もありますが、同じものではないという前提で確認します。
よくある失敗|義務の切り替わりに後手で対応したパターン
法律上のしきい値への対応で起きやすい失敗は、おおむね2つのパターンに絞られます。1つ目は、採用を優先して人数を増やした結果、途中でしきい値を超えていたことに事後で気づくパターンです。
対象者への説明や手続きが後追いになり、担当者の負担が一時的に大きく増えます。2つ目は、しきい値そのものには気づいていても、対応する担当者や手順を決めていなかったため、期限が近づいてから社内で誰が対応するかを慌てて調整するパターンです。
どちらも、人数を数える仕組みと、対応する担当を決めておく仕組みの両方がなかったことが共通する原因です。
社労士に任せる場合と、社内で仕組み化しておく場合の違い
社会保険・障害者雇用の手続き自体は、社労士に依頼すれば対応できます。ただし、社労士に依頼できるのは主に手続きの実行部分であり、「自社がいつ、どのしきい値に近づいているか」を日頃から把握し、社内の採用計画に反映する部分までは、社内に仕組みが残っていないと社労士任せにはできません。
社労士への依頼と、社内での人数把握・採用計画との連動は、役割が異なる作業として分けて考える必要があります。
社労士に相談するタイミングの目安
社内にしきい値の確認役を割り当てた後、実際に専門家へ相談するタイミングの目安は3つあります。①自社の人数が次のしきい値まで2年以内に達する見込みが立った時②短時間労働者の比率が高く、0.5人換算や対象者要件の判定を自社だけで正確に行う自信がない時③過去に社会保険や障害者雇用の手続きでミスや指摘を受けた経験がある時です。
この3つに該当しない段階で早めに相談しても無駄にはなりませんが、何も準備せずに相談すると、現状確認だけで最初の打ち合わせが終わってしまうことが多いため、自社の人数と直近の期限を把握したうえで相談すると、具体的な準備内容の相談に進みやすくなります。
規模別の判断基準|今の人数によって、確認すべき次の期限が変わります
従業員1〜9人の会社は、2035年10月の社会保険適用拡大までは直接の対象になりませんが、採用計画次第で将来の対象期限が変わるため、現在の業務分担を棚卸ししておく段階です。従業員10〜30人台の会社は、2027年10月(36人)や2029年10月(21人)、2032年10月(11人)のいずれかが数年以内に関係してくる可能性が高く、人数の推移を定期的に確認する仕組みが必要です。
すでに37.5人を超えている、または超える見込みの会社は、障害者雇用の対象としての準備に加えて、経理・労務・採用など複数部門にまたがる業務分担の見直しが必要になる段階です。
まとめ|義務が増えるタイミングより前に、仕組み化を終えておきます
社会保険・障害者雇用の義務は、従業員数が法律上のしきい値を超えた時点で切り替わります。2026年7月からの障害者雇用義務の対象拡大(37.5人以上)、2027年10月以降の社会保険適用拡大の段階スケジュール(36人→21人→11人→10人以下)のどちらも、超えてから対応するのではなく、自社の人数と採用計画を踏まえて事前に担当と手順を決めておくことで、期限直前の混乱を避けられます。
「30人の壁」のような組織運営の難しさと、法律上の義務が増えるタイミングは別のものとして、両方を踏まえた準備を進めます。
複数部門にまたがる業務分担まで見直したい場合は
Company OSを見るFAQ|社会保険・障害者雇用の義務でよくある質問
Q. 従業員が37.5人をわずかに超えたら、すぐに障害者雇用の義務が発生しますか。A. 短時間労働者を0.5人として計算した人数で判断します。
パート・アルバイトを含めた実質人数を確認してください。対象になった場合、毎年6月1日時点の報告(ロクイチ報告)は2027年6月1日分から新基準が使われます。
Q. 社会保険の適用拡大は、全ての企業が同時に対象になりますか。A. いいえ。
2027年10月(36人以上)から始まり、2029年10月(21人以上)、2032年10月(11人以上)、2035年10月(10人以下)の順に段階的に対象が広がります。自社の人数に近い期限を確認してください。
Q. 賃金要件(月8.8万円以上)が撤廃されると、何が変わりますか。A. 厚生労働省の案内では2026年10月に撤廃予定とされており、これまで賃金が要件未満で対象外だった短時間労働者も、他の要件(週20時間以上など)を満たせば新たに対象になる可能性があります。
Q. 「30人の壁」への対応と、法律上の義務への対応は同じ準備で済みますか。A. 重なる部分はありますが同一ではありません。
法律上の義務は人数のしきい値と期限が明確に決まっているため、まずは自社の人数と期限の確認を優先してください。Q. 複数の拠点や店舗がある場合、人数はどう数えますか。
A. 障害者雇用の対象判定も社会保険の適用拡大も、原則として事業主単位(法人全体)で従業員数を数えます。拠点ごとの人数ではなく、法人全体の短時間労働者を含めた人数で、しきい値に近いかどうかを確認してください。
毎年10月前後に来る最低賃金改定も、法改正カレンダーと同じく仕組みで受け止めたい方は
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