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SaaSを増やしたのに仕事が増えた会社へ|ツール乱立を仕組みから整理する5ステップ
SaaSを増やしたのに仕事が増えるのは、ツールではなく『つなぎ方』の問題です
営業、顧客管理、チャット、会計、タスク管理。便利なSaaSを部門ごとに導入していくと、個々の作業は速くなっても、会社全体では逆に仕事が増えることがあります。
顧客名を複数システムへ転記する、同じ売上数字がツールごとに違う、どこを見れば最新情報か分からない、退職者のアカウントに重要な設定が残っている、といった状態です。このとき必要なのは『もっと良いツール』を探すことではありません。
どの情報をどこが正本として持ち、誰が流れに責任を持ち、どこまでを自動でつなぐかという業務システムの設計です。
ツール数だけでは判断しない
SaaSが10個あっても役割と正本が明確なら問題にならない場合があります。逆に3個でも、同じ顧客情報をそれぞれ別に更新していれば二重管理になります。
まず確認したい4つの症状|転記・数字のズレ・探す時間・管理者不在
ツール乱立は、契約数より日々の仕事に症状が出ます。①同じ情報を複数回入力する、②部署やツールによって数字が合わない、③最新情報を探すために人へ聞く、④設定や連携の責任者が分からない、の4つです。
どれかが頻繁に起きているなら、追加導入より先に現在の構造を棚卸ししたほうがよい状態です。特に『Excelへ一度出して人がまとめる』『チャットで確認して別システムへ転記する』作業は、システム間の境界を人が手作業で埋めているサインです。
具体例|従業員30名のECブランドでの棚卸し
仮に、従業員30名のECブランドで考えてみます。受注はECカートで受け付け、在庫数は別の在庫管理ツールで管理し、顧客からの問い合わせはチャットツール、売上の集計は担当者が毎週手作業で作ったスプレッドシートで行っていました。
欠品連絡が遅れる原因を調べると、在庫管理ツールの数字が最新でも、チャット担当者はその存在を知らず、過去にもらったメモの数字で案内していたことが分かりました。ここで導入すべきなのは、より高機能な在庫管理ツールではありません。
在庫数の正本は在庫管理ツールであると全員が確認し、チャット担当者はメモではなく正本を直接確認する運用に変えることです。ツールの機能を増やす前に、どの情報を誰が正と見なして動くかを決めるだけで、同じ食い違いの多くは解消できます。
ステップ1|ツール一覧ではなく『業務の流れ』を1本書く
最初にSaaSの契約一覧を作るだけでは、何が問題かは分かりません。問い合わせが来てから受注し、請求し、継続フォローするまでのように、顧客や案件が会社の中をどう移動するかを一つの流れとして書きます。
各工程で使うツール、入力する情報、次の人へ渡す条件を並べると、同じ情報を何度も作っている場所と、人が橋渡ししている場所が見えます。ツール単位ではなく業務単位で見ることが、整理の第一歩です。
ステップ2|情報ごとにSystem of Record(正本)を1つ決める
顧客名、契約状態、売上、請求状況、タスクなど、会社には同じように見えて役割の違う情報があります。重要なのは、それぞれについて『最終的にどこを正しい情報として扱うか』を一つ決めることです。
例えば顧客の連絡先はCRM、請求確定額は会計、契約書原本は文書管理、といった形です。すべてを一つの巨大なツールへ集約する必要はありません。
正本が決まっていれば、他のツールは参照や作業のためのコピーとして扱えます。
結局、全部を一つのSaaSに乗り換えたほうが早いのでしょうか。
ステップ3|ツールではなく『業務オーナー』を決める
システム管理者がいても、業務の責任者がいないと運用は崩れます。CRMの管理権限を持つ人と、『商談ステータスをいつ変更するか』を決める人は別の役割です。
営業プロセスなら営業責任者、請求なら経理責任者というように、情報が次の工程へ渡る条件に責任を持つ業務オーナーを決めます。ツールの設定変更も、その業務ルールに沿って行うようにします。
これで『誰かが便利だと思って項目を増やし、別部署が困る』といった局所最適を減らせます。
ステップ4|連携する境界と、人が判断する境界を分ける
すべてをAPIで自動連携すればよいわけではありません。確定した情報を別システムへ渡す、通知する、定型データを同期する、といった処理は自動化しやすい一方、値引き承認や例外判断まで自動で流すと事故が起きる場合があります。
各工程で『機械的に渡せるもの』『人の判断が必要なもの』を分け、前者だけをAPIや自動化でつなぎます。自動化する前に境界を決めることで、複雑な連携を増やしすぎずに済みます。
業務フローを整理したうえでAPI連携や自動化まで実装したい場合は
AI & Automationの考え方を見るよくある失敗|整理がうまくいかない3つのパターン
ツール整理に着手しても、途中でつまずくパターンはおおむね3つに絞られます。1つ目は、業務フローや正本を決める前に『まず1つの大きなツールへ全部移行する』という結論に飛ぶことです。
移行作業自体が目的化し、既存の業務ルールが整理されないまま新しいツールの中で同じ混乱が再現されます。2つ目は、情報システム部門や経営企画だけで整理方針を決め、実際にツールを使う現場の意見を聞かずに連携や廃止を決めてしまうことです。
現場が使っている独自のスプレッドシートや裏ワザ的な使い方が棚卸しから漏れ、整理後にかえって手作業が増えることがあります。3つ目は、正本を決めた直後に全ての連携を自動化しようとすることです。
例外処理や承認が絡む部分まで一度に自動連携へ組み込むと、想定外のデータが流れた際の確認が難しくなります。まず正本と業務オーナーを決め、自動化は機械的に判断できる範囲から段階的に広げるほうが、手戻りが少なくなります。
情報システム部門がない会社での進め方
中小企業では、SaaSの契約や連携を専門に見る担当者がいないことが多くあります。この場合、特別な体制を新設するより、各業務の責任者がまず自分の持ち場のツールだけを棚卸しするところから始めるほうが現実的です。
経理担当者は会計・請求関連、営業責任者は顧客管理・見積関連のように、業務単位で担当を分けて正本を決め、最後に経営者や管理部門が全体を見て重複や連携漏れを確認する順番にします。一人の担当者が全社のSaaSを同時に整理しようとすると範囲が広がりすぎて止まりやすいため、影響の大きい1つの業務から着手し、他の業務へ順番に広げる進め方が、少人数の会社では続けやすい方法です。
ステップ5|残す・つなぐ・やめるの3分類でSaaSを整理する
業務フローと正本が決まったら、各ツールを『残す』『つなぐ』『やめる』の3つに分類します。正本として必要なツールは残す。
別工程で必要だが二重入力が発生するものは必要最小限の連携を設計する。同じ役割が重複し、利用者も少ないものは統合・解約候補にします。
この順番なら、単純に契約費が高い順に解約して必要な機能まで失うことを避けられます。整理の基準はSaaSの人気や機能数ではなく、会社の業務システムの中で役割があるかどうかです。
新しいSaaSを追加する前に確認する3つの基準
ツール整理を終えても、新しいSaaSを増やす判断基準が変わらなければ、同じ乱立がまた始まります。導入前に確認したい基準は3つです。
①既存ツールの設定や使い方の工夫で同じ目的を達成できないか。新機能に見える要望の多くは、既存ツールの運用ルールを変えるだけで解決できる場合があります。
②導入後、その情報の正本をどのツールにするかが明確か。新しいツールが既存の正本と同じ情報を別の形式で持つなら、二重管理の火種になります。
③主要な既存ツールとAPIやエクスポート/インポートで連携できるか、少なくとも連携しない場合の手作業の範囲が明確か。この3点を導入前の確認事項として決めておくと、便利そうという理由だけでツールが増える状態を防げます。
AIを入れるほど、ツール乱立は先に整理したほうがよい
AIやエージェントに社内業務を任せる場合、参照する情報源が曖昧だと結果も不安定になります。顧客の最新ステータスがCRMとスプレッドシートで違う、商品情報が複数場所にある、といった状態では、AI以前にどの情報を信頼するか決められません。
AI導入前にSystem of Recordと業務オーナーを整理しておくと、AIが読む場所、更新してよい場所、人へ確認すべき場所を明確にできます。ツール整理はAI導入とは別の古い課題ではなく、むしろ自動化を安全に進めるための土台になります。
全部入れ替える前に試す、90分のツール乱立棚卸し
まず主要な1業務だけを選び、関係するツールを横に並べます。次に、各ツールで作成・更新している情報を書き、その情報の正本を1つ決めます。
最後に、ツール間を人が転記している場所へ印を付けます。ここまでで、最初に直すべき連携点が一つか二つ見えてきます。
全社システム刷新の企画書を作る前に、この小さな棚卸しを行うだけでも、『必要なのは新しいSaaSなのか、既存ツールの連携なのか、業務ルールの変更なのか』を切り分けやすくなります。
ツール単体ではなく、会社全体の仕事の流れから再設計したい場合は
Business System Buildを見る整理を先延ばしにした場合に積み重なるコスト
ツール整理は緊急度が低く見えるため、売上に直結する仕事を優先して後回しにされやすい領域です。しかし、同じ情報を複数箇所へ転記する作業は、担当者が増えるほど総時間が積み重なります。
さらに、どの数字が正しいか分からない状態で意思決定を続けると、在庫切れや請求漏れのように顧客へ直接影響する事故につながることもあります。退職や異動で担当者が入れ替わるたびに、引き継ぎ資料に『このツールのこの項目は実は使っていない』『別のシートで管理している』といった注記が増えていく会社は、すでに整理のコストを先送りしている状態です。
整理にかける時間を一度確保したほうが、転記・確認・引き継ぎに毎月かかる手作業の時間を、長期的には減らせる場合が多くあります。
整理にかかる期間の目安
ツール整理にかかる期間は、対象業務の複雑さによって変わります。受注処理や請求のように手順が比較的固定されている業務であれば、ステップ1の業務フロー整理からステップ5の分類まで、1〜2週間程度で初版をまとめられることが多くあります。
一方、営業や顧客対応のように例外対応や部署をまたぐ確認が多い業務では、関係者への聞き取りに時間がかかり、初版完成まで1か月前後かかる場合もあります。最初から全社のSaaSを同時に整理しようとせず、影響の大きい1業務でこのサイクルを一度回し、かかった時間と見えてきた課題を踏まえて次の業務に広げるほうが、計画の精度も上がります。
自社で進めるか、外部に依頼するかの判断基準
業務フローの棚卸しや正本の決定は、業務内容を理解している社内の担当者でなければ判断できない部分が多く、最初のステップは基本的に自社で進めるほうが精度が上がります。一方、API連携の実装や複数ツールをまたぐ自動化の構築は、技術的な知識が必要になるため、社内に実装できる人がいない場合は外部へ依頼する選択肢も検討できます。
判断の目安は、『何を正本にし、どこまでを自動でつなぐか』という設計自体を外部に委ねるか、設計は自社で決め、実装だけを依頼するかです。設計を丸ごと外部へ渡すと、業務の実情と合わない連携になりやすいため、少なくとも業務オーナーと正本の決定は社内で行い、実装や技術的な連携部分から外部の手を借りる順番が安全です。
複数部署が関わる場合は、進行役を1人決める
受注から請求までのように、営業・在庫・経理など複数部署のツールをまたぐ業務では、各部署がそれぞれの立場で正本を主張し、話が噛み合わないことがあります。この場合は、特定の部署の責任者ではなく、業務全体の流れを把握できる立場の人を進行役として1人決め、各部署の正本案を聞いた上で最終的な対応表を一つにまとめる役割を持たせます。
進行役は技術的な知識よりも、部署間の利害を調整し、決定事項を記録して関係者へ共有できることが重要です。決定後も、対応表を1つの場所で管理し、変更があれば都度更新することで、どの部署が後から勝手に正本を変えてしまう事態を防げます。
まとめ|SaaSを減らすことではなく、会社の正本と流れを決める
SaaS乱立の解決は、契約数を減らすことそのものではありません。業務の流れを見える化し、情報ごとのSystem of Recordを決め、業務オーナーと連携境界を定義し、そのうえで残す・つなぐ・やめるを判断することです。
この順番を守れば、便利なツールを捨てずに二重入力や確認作業だけを減らせる場合があります。ツールを選ぶ仕事から、事業が回る仕組みを設計する仕事へ視点を移すことが、DX投資を実際の生産性へ変える入口になります。
FAQ|SaaS乱立・ツール整理でよくある質問
Q. SaaSはいくつ以上あると多すぎますか。A. 個数だけでは判断できません。
役割の重複、二重入力、正本の不明確さがあるかで判断します。Q. まずコストの高いツールから解約すべきですか。
A. 業務上の役割を確認せず解約すると、別の手作業が増えることがあります。業務フローと正本を決めた後に判断します。
Q. iPaaSや自動化ツールを入れれば解決しますか。A. 業務ルールが曖昧なまま連携を増やすと複雑さも自動化されます。
先に情報の正本と境界を決めてください。Q. AIエージェントを導入する前にも整理が必要ですか。
A. 必要です。AIが参照・更新する情報源と、人へ判断を戻す条件を明確にしておくことが安全な自動化の前提になります。
Q. 整理のために解約や契約変更をするとき、誰の承認が必要ですか。A. 契約や費用に関わる決定は経営層の承認が必要ですが、業務フローの棚卸しや正本を決める作業自体は現場主導で進められます。
Q. 整理した後、再び同じ状態に戻らないためにはどうすればよいですか。A. 半期か年次のタイミングで、追加されたツールと正本の対応表を見直す運用をあらかじめ決めておくと、乱立の再発を早期に見つけられます。
関連する事業設計を整理するなら、AIコンテンツ自動化の費用はどう決まる?|ツール代・構築費・運用改善を分けて考えるも参考になります。
この内容、うちの場合はどうなる?を、直接聞いてみませんか。
Web・EC・広告・AI活用まで、事業の現在地に合わせてCATARIVEがお話をお伺いします。
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